【 巻頭言 】
効率良い和牛繁殖基盤

 和牛に求められている経済的能力は「産肉能力」と「種牛能力」に大きく分けられる。「産肉能力」の改良は遺伝率の高さから個体選抜が有効で、特に近年は育種価を用いた選抜により、増体性・屠肉性に優れた種雄牛が作出され効果を上げている。一方、「種牛能力」の重要な形質である繁殖性の改善は環境要因の割合が大きく、生産現場での技術指導などに重点が置かれている。では、遺伝的な改良効果はないのかと言えばそうではなく、繁殖成績の良い母牛の子を後継牛として残すことが、和牛繁殖経営にとって重要なポイントの一つであることはよく言われている。兵庫県の分娩間隔の平均値は404.6日と、全国平均414日より優秀な成績を示しているが、さらに別の指標でも誇れる数字がある。それが連産性である。(社)全国和牛登録協会では、連産牛表彰規程というものを設けており、全国で年間500頭ほどを表彰しているが、このうち兵庫県で平成26年度に連産牛表彰を受けた牛は57頭と、全国で2番目の頭数となっている。この規程の主要な条件は「平均分娩間隔が365日以内で10産以上していること」となっており、但馬牛の代名詞である「長命連産」性の証左と考えられる。
 子牛価格が高値で推移している現在、母牛が高齢でも、その子牛がしっかり飼われていれば評価は決して低くないので、古い母牛にもう1産頑張ってもらって、子牛の供給に努めるべきであろう。淘汰してから雌子牛を導入すれば、子牛が出荷されない期間が生じる。わずか1頭でも出荷頭数を増やす努力が望まれる。さらには、繁殖性の高い未経産妊娠牛が導入できるシステムの検討など、効率良い生産基盤の充実を真剣に考える必要がある。
(S.S)
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(畜産技術ひょうご117号 発行:2015年2月9日)