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1.はじめに | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
食肉衛生検査センターでは、食肉衛生検査技術の向上を目的とした病理・微生物・理化学等の各種研修会を定例的に開催している。病理部会研修では全国食肉衛生検査所協議会と協力して、日常検査における病理学的調査研究、腫瘍症例の蓄積等を行っている。今回、淡路食肉衛生検査所において遭遇した「1個体から異なる2種類の細胞を由来とした重複腫瘍」は比較的報告も少なく稀少な症例である。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2.重複腫瘍症例の概要 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
症例牛は黒毛和種・牝・7歳齢で脂肪壊死症として平成14年11月6日、淡路食肉センターに病畜搬入された。生体検査時は起立姿勢で削痩を呈する以外に特筆すべき所見は認められなかった。内臓検査において胸腔および腹腔に腫瘍性病変を認め、病理組織検査を行った。 @肉眼所見 (胸腔)胸腔漿膜面全体にうずら卵〜小豆・ゴマ粒大で大小不同の比較的硬い乳白色〜黄白色扁平球形腫瘤が播種状に多発し、一部は癒合して塊状もしくは乳頭状結節を形成していた。 (腹腔)腎は軽度に瘢痕萎縮し、腎臓皮質内に乳白色結節が散在する。右卵巣では直径約4p大で単一の黄白色球形腫瘤を認めた。子宮は全体が腫瘤塊を形成し、割面は黄白色髄様を呈していた。 A組織所見 〔胸腔〕腫瘤は塩基性に濃染する核を持つ紡錘形〜類円形の細胞が結合組織を伴って索状・乳頭状・管腔状に増生していた。増生している細胞の中には微絨毛をもつものや、メタクロマジー陽性物質を細胞表面に持つものも認め、管腔内に砂粒体を持つ所見も認めた。 〔腹腔〕 脾臓ではリンパ濾胞構造は減少し、び漫性にリンパ球様細胞が増殖していた。 腎臓では、皮質の間質に異型性の核を持つリンパ球様細胞が増殖していた。 腎リンパ節ではリンパ球様細胞が瀰漫性に増殖しており、starry-sky像も認めた。 子宮ではリンパ球様腫瘍細胞が重度に粘膜〜漿膜にかけて浸潤増殖する。 右卵巣は黄体で、黄体内及び黄体周囲の間質にリンパ球様腫瘍細胞が浸潤増殖する。 |
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腎臓乳白色結節 |
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子宮 |
胸腔漿膜面腫瘤 H・E染色組織像 |
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腎臓乳白色結節 H・E染色組織像 |
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3.結果および考察 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
本症例は肉眼所見および組織所見から、胸腔の悪性中皮腫と腹腔のリンパ腫による全身性腫瘍と診断して全部廃棄の行政処分とした。 平成14年度の兵庫県下食肉センター(政令市等を除く)におけると畜検査頭数(牛)は29,732頭であり、何らかの理由により一部あるいは全部廃棄処分となったものは、19,187頭であった。(表1) この廃棄処分された牛のうち、腫瘍と診断されたものは43頭であり、このうち重複腫瘍は本症例のみであった。 過去の全国食肉衛生検査所協議会病理部会研修会において1,815題(平成15年9月現在)が演題提出されている。このうち牛の重複腫瘍症例は3例(肝細胞線腫と扁平上皮癌1例・中皮腫と顆粒膜細胞腫2例)であることから、重複腫瘍の発生が稀少なものであることが推測できる。 なお、各食肉衛生検査所が行政処分を行った44例の腫瘍についての診断および処分件数は表2のとおりである。 |
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表1 と畜検査状況
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表2 腫瘍発生状況
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